ゴー宣ジャーナリスト・土曜日担当のよっしーです。
ある日職場で、お客様(推定70代・女性)が雑談中、こんな事を言っていた。
「うちの旦那は『年金さま』だから」
年金さま???何それ?
初めて聴くフレーズだ。
会話を聴いていると、どうやら
「旦那が生きているだけで年金が入って自分は生活できるのだから「年金さま」だと思えば多少のことは我慢ができる。」
という意味で、自分の夫を半分冗談で「年金さま」と言っているらしい。
推定70代のその女性は、雑談の中で何度も『年金さま』というフレーズを連呼しながら笑い話に変えて、日頃のストレス発散をしている様子だった。
感心するフレーズではないけれど、凄いフレーズを思いつくものだなぁ、とは思う。
長年連れ添った妻から、人生の終盤で「年金さま」と呼ばれているご主人を気の毒に思いつつ、
そのように奥様に言わせてしまう理由が他人にはわからない夫婦の長年の生活の中であったのかもしれない、とも想像してみた。
この女性のように、あえて日頃の不満を笑い話にする事で、小さな不満をチョコチョコ発散して精神の健康を保とうとする人もいるから、本当は夫婦円満なのかもしれない。
あまりにも年金さまというフレーズが衝撃だったので、『年金さま』と家族に思われている高齢者はどのくらいいるのだろうか?
と思っていたら、とあるネット記事をみつけた。
https://gentosha-go.com/articles/-/28703
この記事によると、厚生年金(会社員が加入する年金制度)に加入していた高齢者は、治療費より多く年金がもらえる場合が多いため、治る見込みのない高齢者家族を年金目当てに生かしておくために延命治療を望む家族がいるらしい。
なんということだろう!
私が世間知らずなのかもしれないが、この事実は衝撃だった。
「寝たきり大黒柱」(寝たきり高齢者の年金が主な収入という意味)という言葉もあるらしい。
親が亡くなって年金がもらえなくなることを恐れて、死亡届を出さない人がいたという報道をみたことはあるけど、年金目当ての延命治療も似たようなものではないか。
(もちろん、純粋に生きていて欲しいと願って延命治療を望む家族も多いはず。)
こんな残酷な仕打ちが世の中にはあるのだ。
延命治療を望む高齢者は少ない。(と思っています)
私の高齢親も「治る見込みがないなら延命治療はやりたくない」と常々言っているし、私もその時が来たら親の望みを叶えるつもりでいる。
そのために、親を年金さまにしないためには、自分自身が独立・自立していなければならない。
…という、当たり前の事に行き着く。
日本の延命治療が問題になる場合、多くは医療関係者が患者を死なせない治療を目的にしている事を問題視する視点で語られることが多いけれど、実は、年金目当ての家族側が延命治療を要望するケースもあるのではないか?
だとしたらあまりにも残酷で、家族の年金さまとなって延命治療で無理矢理生かされているかもしれない高齢者に同情してしまう。
高齢者の延命治療の増加は、国の医療費増大や年金支給の増大にも繋がる公の問題でもあるけれど、その原因が医療関係者だけでなく、家族側にもあるとしたら…?
家族の年金さまとして、病院のベッドに多くの管をつけながら、延命治療で無理矢理生かされている高齢者の姿が脳裏に浮かんできて、なんとも言えない気持ちになった。
延命治療の裏の事情の一端を知り、私もまだまだアマちゃんだった!と思うばかり。
国と国の関係でもそうだけど、何かに依存するというのは、大事な何かを喪失するという事でもあるんだなぁ。
と、延命治療と年金さまの関係を知って、改めて思ったのでした。
【よっしー プロフィール】
パート職員と自営の経理ブチョー掛け持ちで夫と子供3人で暮らす主婦。よしりん先生デビュー作・東大一直線でよしりんワールドの虜に。ゴー宣道場第1回から参加している、筋金入りのよしりんファン。
【トッキーコメント】
おそらく「年金さま」と呼ばれている夫って、妻からは現役時代も単に「給料配達人」としか扱われていなかったんでしょうねえ。もちろん、本人のせいもあるんだろうけど、一番身近な妻からそんな扱いを受け続け、ましてやそのまま「寝たきり大黒柱」にされて終わる人生なんて、想像しただけでぞっとしてしまいます。
『コロナ論』でも描いていたけれど、延命治療なんて、スウェーデンから見たら「虐待」ですからね。
日本人はもうすこし人間の尊顔ってものを考えた方がいいんじゃないか? と思ってしまいます。